Wang xing dou
望星斗 / 見上げてごらん夜の星を
2019
4K Video
Stereo sound
LED Display
Radio
中国、広州へ滞在しながら、この都市の環境をめぐる問題をリサーチした際、私が気がついたことは夜空に星が無いことだった。都心に暮らす若者にそのことを問うと、「星はほとんど見たことない、見えても1粒、2粒だ」と答えた。幼い頃から夜空に浮かぶ星を眺めて暮らしていた私 からすると、それは信じられない言葉だった。 人類は古くから星空を見上げることで多くを学び、神話を描くことで輝く光に夢や、希望や幸せを願ってきた。私はこの作品を通して、同じアジア人としてこの国の未来を星に願うことにした。
この都市の街並みを彩るディスプレイの輝かしい光は、鮮やかな色彩を大気に広げ、ランドスケー プを華々しく演出している。しかし私たちが見ているこの拡散した色彩は、PM2.5など有害物質の微粒子に反射した光であり、星空を常に霞ませている汚染そのものでもある。広州の大気汚染問題は北京、上海に比較すると軽視されているものの、世界大気質指標( The World Air Quality ) では日常的に Unhealthyを指し示している。これらの大気汚染と光害が結びつくことで広州の夜空は常に明るく、政府が環境政策に力を入れている現在も星を見上げることはほとんどできない。またこの問題は決して中国だけの問題ではなく、大気の流れに乗って日本や韓国などの隣国、アジア圏全域に影響を及ぼしている。
私は「上を向いて歩こう”SUKIYAKI SONG”」で世界的に知られている日本人歌手、坂本 九の歌 「見上げてごらん夜の星を」の歌詞を、中国に暮らす人々に贈ることで、日中が協力しながら大気汚染問題に向かい合い、これからの未来、全てのアジア人が星空を見上げられることができる幸せを願う。
助成:コダマシーン